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技術基盤
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自動車
可視光+遠赤外線の複合カメラで、路上の歩行者を検知。
画像認識技術だからこそ広がる、多彩な用途の可能性。
安全な走行を支援するため、さまざまな車載システムの研究開発が進められています。中でも歩行者検知に関しては、ミリ波を利用したシステムが、すでに一部の高級車に搭載されています。当社が研究開発を行っているのは、可視光と赤外線のハイブリッドカメラを使用した歩行者検知装置。人だけでなくさまざまなモノの形状を知ることができる画像認識の特性を活かし、自動車以外の分野への応用も期待されています。
技術開発の背景 - Social Needs
「海外製品に対抗できる、信頼性の高い歩行者検知システムで、運転者支援機能のさらなる充実を図りたい。」
- 画像による歩行者検知システムとしては、10年以上前に実用化された海外ベンチャー企業の製品が、世界の市場をほぼ独占しています。ところが、システムの中味がブラックボックスであるため、日本や米国、欧州の自動車メーカーの多くは、安全規定の面で問題があるとして不採用。国内の自動車部品サプライヤーからは、「その製品に代わる歩行者検知システムが欲しい」との声が挙がっていました。
- 車載製品を数多く手がけてきた実績のある当社では、電子製品・機械製品の企画・開発・販売等を行うアイエスエス(株)、岩手工業技術センターとの共同プロジェクトとして、経済産業省の「戦略的基盤技術高度化支援事業」の採択を受け、2012年9月から研究開発をスタートしました。アドバイザとして、岩手県立大学の伊藤憲三先生(ソフトウェア情報学部・研究科)にもプロジェクトに参加いただいています。
この技術の概要 - Outline of the Technology
可視光カメラと遠赤外線カメラのハイブリッドカメラにより、昼夜を問わず、あらゆる場所での歩行者検知を可能に。
- 車体後部に設置した可視光カメラと遠赤外線カメラのハイブリッドカメラ(FIR-V)により、歩行者を実時間(リアルタイム)で検知します。
- 昼間および明るい場所では可視光カメラ、夜間および暗い場所では遠赤外線カメラを使うことで、どのような時間帯・場所でも、歩行者の検知を可能とします。現状では高価な遠赤外線カメラですが、今後、手の届きやすい価格になることを予測し、システムに採用しました。
この技術の発展途上なところ - Technology in Process
歩行者を正確に判定するための検出率の向上と、検知アルゴリズムの車載用ボードへの組込み実現が、今後の課題。
- 歩行者を検出するには、画像が人であるかどうかを判別するための「学習データ」が必要です。まずは走行中の自動車からさまざまな状況の歩行者を撮影し、大量のデータ収集を実施予定。そのうえで可視光、さらには遠赤外線で人を正確に検知できるよう検出率の向上に取り組みます。
- 2012年度末時点では、立体物・動体検知のシステムをPCに実装し、動作させることに成功しました。今後は、「立体物を検知」→「人かどうか判定」というアルゴリズムを組込み用ボードに実装することが目標。リアルタイムでの情報処理を行うため大量の記述を必要とするプログラムを、いかに軽くできるかが課題です。
将来的に期待できること - Future of the Technology
人やモノの検知で、自動車の予防安全機能の高度化に貢献。
工場内の危険予知や、不審者発見への応用も。
- 将来的には、衝突被害軽減などの高度な安全装置を開発する国内メーカー、特に愛知県に多数ある自動車関連企業に対して、技術を提供することが目標。予防安全を実現する運転者支援機能の高度化により、日本の自動車産業の発展に貢献することをめざしています。
- 画像は電波と異なり、検出したモノが何かを知ることができるため、汎用性が高いのが特長。駐車場のブロックなど、人以外の立体物の検出にも応用できます。工作機械の稼働範囲や工場内の搬送マシンの経路にいる人を検知し、危険予測・防止に活用するなど、車載以外の用途への応用も期待できます。
- 当社では、画像認識技術を、人の異常行動発見に役立てる技術の開発も行われています。この技術が確立すれば、通常の通行人とは異なる動きをしている不審者の発見など、セキュリティ分野での応用が可能。画像認識技術は、日常のさまざまなシーンの安全を支える可能性を秘めています。
この技術の強み - Advantage Point
1.車載製品への深い理解に基づく信頼性の高さ
車載システムには、低消費電力など、組込みシステムならではの特性や、高い信頼性が要求されます。萩原電気がルネサス特約店として蓄積してきた、組込み用ハードウェア設計に関する豊富なノウハウが活かせる分野といえます。
2.車載カメラを利用した物体検知アルゴリズムを独自開発
NEC製CyberWorkBench向け画像ライブラリの開発などで培った画像処理に関する知識をもとに車載カメラを利用したオリジナリティのある物体検知アルゴリズムを考案し独自開発をしています。
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